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フリーランス翻訳者の取引形態別の単価相場【和訳・英訳・ポストエディット】

翻訳者にとって単価は収入を左右するとても重要なポイントです。

例えば、4000ワードの英文和訳を依頼されたとしましょう。

このとき、単価が1円違えば、あなたに入る収入はなんと4000円も変わります。

4000円あれば、4回ランチに行けちゃうし、服だって1〜2枚買えちゃう!

作業内容は変わらないのに、単価が変わるだけで入ってくるお金が大きく違ってくるんです!

単価の重要性、ご理解いただけましたか?

この記事では、翻訳者の収入に大きな影響を与える単価について、詳しく解説しています。

将来の収入の見通しをつけるため、または実際に翻訳会社と単価交渉する際の参考に、ぜひ役立ててくださいね!

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目次

翻訳料金の仕組み

まず大前提として、翻訳料金がどのように決まっているかを説明します。

翻訳案件には、必ずそれを依頼する顧客(クライアント)、引き受ける翻訳会社(エージェント)、実際に作業する翻訳者の3者が関わっています。

  • エージェントを挟まない「直取引」もあります)。

下の図のような関係だね!

それぞれの主な役割は次のとおりです。

クライアント

エージェントに翻訳を発注し、納品物を確認後、エージェントに翻訳料金を支払う

エージェント

適任の翻訳者に翻訳を依頼し、納品物を受領したらクライアントに納品する
翻訳者には作業後に翻訳料金を支払う

翻訳者

エージェントからの依頼に応じて翻訳作業をし、完了後に納品する


翻訳者に支払われる翻訳料は、エージェントがクライアントから受け取った翻訳料金から、手数料や管理費などのいわゆる中間マージンを差し引いた金額です。

つまり、こういうことですね↓

翻訳料 = エージェントが受け取る翻訳料金 ー 中間マージン(手数料など)

エージェントがクライアントに請求する翻訳料金は通常20円前後であることが多く、翻訳者が受け取る翻訳料金はその半分の10円前後です。

つまり、中間マージンは10円前後なんだね!

このように、エージェントが得る手数料が翻訳料金の半分程度にものぼるため、もしエージェントを介さず自分で直接取引先と契約することができれば、翻訳単価は一気に上がります

フリーランス翻訳者の翻訳単価の相場

では、フリーランス翻訳者の単価は一般的にどれくらいなのでしょうか?

ここでは、

  • 翻訳エージェント経由
  • 直取引(クライアントとの直接取引)
  • クラウドソーシング経由

の3つのパターンに分けて説明したいと思います。

翻訳エージェント経由と直取引については、「2017年度翻訳白書 完全版」と「通訳翻訳ジャーナル2014年夏号」のデータをもとに書いています。

翻訳エージェント経由

まずは翻訳エージェントを経由した場合の単価を見てみましょう!

英訳

単価割合(%)
3円未満0.7
3〜5円未満11.5
5〜7円未満37.4
7〜9円未満16.7
9〜11円未満13.3
11〜13円未満7.4
13〜15円未満8.1
15〜17円未満2.6
17〜19円未満1.5
19〜21円未満0.4
21〜23円未満0.4
23円以上
翻訳会社向けの日英料金(原文基準)(出典:2017年度翻訳白書 完全版)

対翻訳エージェントの日英(英訳)料金は、5~7円が37.4%と最多になっています。

7~9円未満までで全体の50%以上を占めており、駆け出しの頃は単価が低いことが多いので、最初は7円前後の単価になると考えておいた方がよいでしょう。

和訳

単価割合(%)
3円未満2.5
3〜5円未満4.7
5〜7円未満5.8
7〜9円未満24.0
9〜11円未満37.2
11〜15円未満20.1
15〜19円未満4.1
19〜23円未満0.8
23〜27円未満0.6
27〜31円未満0.3
31〜35円未満
35円以上
翻訳会社向けの英日料金(原文基準)(出典:2017年度翻訳白書 完全版)

対翻訳エージェントの英日(和訳)料金は、7~9円未満が24%、9~11円が37.2%で、この2つの価格帯が全体の50%を占めています

私は和訳が多いですが、この単価は私の肌感覚にもかなり近いです

未経験からのスタートの場合、9円前後になることが大半です。

直取引

次に、企業と直接取引した場合の単価です。

間に翻訳会社を挟まないので、翻訳エージェント経由よりも単価が高くなる傾向にあります。

英訳

単価割合(%)
3円未満
3〜5円未満2.4
5〜7円未満10.0
7〜9円未満14.1
9〜11円未満15.3
11〜13円未満13.5
13〜15円未満10.0
15〜17円未満10.0
17〜19円未満5.9
19〜21円未満8.2
21〜23円未満3.5
23円以上7.1
クライアント向けの日英料金(原文基準)(出典:2017年度翻訳白書 完全版)

対翻訳エージェントでは5〜7円がボリュームゾーンでしたが、直取引では同じ価格帯の割合が3分の1以下に減っています。

その分9〜11円の単価が増え、翻訳エージェント向けでは1ケタ台だった11円以上の価格帯でも割合が2ケタにのぼるなど、全体的に単価がぐっと上がったのが分かります。

和訳

単価割合(%)
3円未満1.8
3〜5円未満2.4
5〜7円未満4.8
7〜9円未満10.2
9〜11円未満9.6
11〜15円未満21.1
15〜19円未満26.5
19〜23円未満12.0
23〜27円未満4.8
27〜31円未満1.8
31〜35円未満2.4
35円以上2.4
翻訳会社向けの英日料金(原文基準)(出典:2017年度翻訳白書 完全版)

和訳でも、ボリュームゾーンが15〜19円未満の単価帯に移っています。

翻訳エージェントを経由したときのボリュームゾーンは7〜9円でしたよね。

なんと直取引では、翻訳エージェント経由の倍の単価になってるんだね!

英訳でもそうでしたが、やはり直取引は、翻訳エージェント経由で取引するよりも数段メリットがあることが分かります。

クラウドソーシング経由

クラウドソーシングとして有名なのはランサーズクラウドワークスですが、これに似た形態の翻訳としてウェブ翻訳があります。

ここではこの両方のパターンを紹介します!

クラウドソーシング

実務経験を積むためにチャレンジする人が多いクラウドソーシング。

ここではクラウドワークスランサーズに掲載されている実際の案件を使って単価を調査しました。

英訳
サービス名字数報酬単価
クラウドワークス1800字1000円0.5円
ランサーズ5000字10,000〜20,000円最大4円
2500字10,000〜20,000円最大8円
4500字20,000〜30,000円最大6.7円
*単価は、報酬が最大の時の値(10,000〜20,000円であれば20,000円)を字数で割ったもの

一時期クラウドソーシングは考えられないほど料金が安く、業界内では悪評が高かったのですが、こうしてみると少し改善されれていますね。

特にランサーズでは、AI判定による適正価格が表示されるようになりました。

このためか、「確かに安いけどあり得ないほど安いわけではない」レベルのものが増えたように感じます。

やっぱり適正価格が表示されると、極端に安い値段では依頼しづらいのかな?

また、依頼を受ける側も、「適正予算」や「有料価格」の案件だけに絞って検索できるようになっています。

かなり受託者側に配慮したサービスになっていると感じました。

ランサーズ案件詳細画面

AIが案件の価格を判定し、そのランクに応じて絞り込みができる!

一方クラウドワークスは、事例が少なかったのもありますが、ビックリするぐらい安いですね・・・。

総じて翻訳エージェント経由よりは確かに安いですが、案件によっては適正な単価のものもあるので、ちょくちょく覗いてみるのもありだと思います!

和訳
サービス名字数報酬単価
ランサーズ8000ワード40,000〜50,000円最大6.25円
5000ワード20,000〜30,000円最大6円
2,200ワード9,000〜10,000円最大4.5円
765字2,000〜3,000円最大3.9円
*単価は、報酬が最大の時の値(10,000〜20,000円であれば20,000円)を字数で割ったもの

和訳は案件による差が大きいものの、全般的に英訳に比べてかなり安い印象を受けました。

4円台になると、翻訳エージェント経由の半額以下の単価水準です。

その業務が自分にとって本当にメリットがあるか、他に経験を積む方法はないかを十分に考えてから引き受けてね!

ウェブ翻訳

ウェブ翻訳で有名なのは、次の2つのサービスです。

依頼時の単価(クライアントがウェブ翻訳サービスに支払う金額)は次のとおりです。

サービス名言語方向/レベル単価
スピード翻訳英→日14円/文字
日→英7円/文字
YAQSCASUAL(経験2〜3年の翻訳者)5円/word
STANDARD(経験5年以上の翻訳者)10円/word
PRO(経験10年以上の翻訳者)15円/word
※この価格で依頼を受ける経験10年以上の翻訳者はいるのか・・・?

驚きの安さ!

依頼者がウェブ翻訳サービスに支払う単価が、翻訳エージェント経由で翻訳者に支払われる単価とほぼ同水準ですね・・・

ここからさらに中間マージンが引かれることを考えると、翻訳者に入るのはさらにこの半額以下でしょう。

ウェブ翻訳サービスを使うと、今やクラウドサービスより低価格で案件を引き受けることになる場合もあるということだね・・・

個人的には、この手の安かろう悪かろうのサービスは、機械翻訳が進化したときに真っ先に消滅すると考えています。

ですので、翻訳を長く続けていきたいのであれば、自分のスキルを磨き、そのスキルを高く買ってくれる取引先を開拓していくことを考えるべきです。

単価に関するよくある質問

分野によって単価は違うの?

通訳翻訳ジャーナルの調査によると、扱う分野によって単価に差があるようです。

翻訳会社(96社・複数回答)が、「報酬が高くなる」と回答した分野は下の表の通りです。

分野回答社数
医学・薬学33社
法律・契約26社
特許15社
金融8社
IT5社
報酬が高くなる分野(翻訳会社96社への調査/複数回答)

チェッカーの単価はどのくらい?

チェッカーの場合、ワード単価で報酬が支払われる場合と、時給で支払われる場合があります。

チェッカーについては単価調査の資料がないので、アメリアの案件をちょっと覗いてみました!

 アメリアについて詳しくはこちら!

アメリアに掲載されているチェッカー関連求人の単価は下のとおり。

チェッカーアシスタント時給1200円
校正者(メディカル)10ドル/1時間(1時間:2,000〜3,000ワード)
校閲者(金融・法務)時給税抜き953円(税込1,048円)
校正者(ビジネス・マーケ・金融)15〜20USD per source word volume
翻訳チェッカー(ディスクロージャー)時給2,500円〜(派遣)

*チェッカーは校正者/校閲者など企業によって呼び方が変わります!

かなり条件がバラバラでなかなか見づらいですが・・・

個人的な感覚では、時給で1500円前後、単価なら1ワード7~8円(英日の場合)が妥当かなと思います。

翻訳業務よりはどうしても安くなりますが、チェッカーは決して簡単な仕事ではなく、かなりの集中力が必要です。

なので、必要以上に安く引き受ける必要はありません!

未経験だと単価は低い?

未経験だと当然単価は低くなります。

アメリアなどに掲載されている求人の場合、大抵待遇については下のように書かれています。

翻訳 0.07ドル/ワード~ 

「0.07ドル~」なので、場合によっては0.07ドル以上のレートになる可能性があります。

が、未経験の場合はほぼこの最低レート(この場合0.07ドル)で決まると思って間違いないでしょう。

ただし、経験を積めばレートが上がる可能性はあります。

エージェントとの取引が順調にいったら、ぜひ頃合いを見計らって単価交渉してみてね!

単価って上がるの?

上にも書きましたが、単価は上がる可能性があります

ただし、そのためにはこちらから申し出る必要があります。

よほどのことがない限り、翻訳会社の方から値上げを切り出してくることはありません。

単価交渉のタイミングや方法について、「通訳翻訳ジャーナル2014年夏号」に掲載されていた体験談をいくつか紹介します!

1社は大型案件のトライアルを担当して合格した際に、その翻訳会社の単価の上限まで上げてもらった。もう1社はボリューム案件を担当後に、指名依頼が続くようになった際に交渉。いずれもgive and take。まず自分の力を証明してから交渉に挑んだ。

通訳翻訳ジャーナル2014年夏号p35

ほんやく検定、ITソフトウェア翻訳士などの資格取得時に登録会社数が大幅に杖他。初期単価の提示も全体的に高かったため、その提示額を元に元々登録していた翻訳会社に単価アップを求め、承諾をもらった。

通訳翻訳ジャーナル2014年夏号p35

一方でこんな体験談もあります。

フリーになった03年から08年の間は仕事量も多く、交渉して徐々に値上げしてもらった。09年以降に仕事量が減り、依頼が来なくなった。以降は仕事があるだけマシという感じで、こちらから値下げを切り出したり、値下げ要求を飲んでいる。

通訳翻訳ジャーナル2014年夏号p35

リーマンショックの直前に5〜6社に対して一気に値上げ交渉。一応全社がある程度値上げをしてくれた。しかしリーマンショック後は単価が高いと思われ仕事が来なくなった。タイミングが悪すぎた!

通訳翻訳ジャーナル2014年夏号p35

翻訳会社には、日々安価で使える新しい翻訳者が登録されています。

値上げをすると、品質面でメリットを出さない限り(または出したとしても)、安い翻訳者に負ける可能性があることを肝に銘じておいてください!

翻訳者にとっては単価値上げは収入増につながる魅力的なカードです。

ただ、なかなか使い方が難しく、私も未だにうまく使いこなせていません。

ポストエディットと単価

翻訳の仕事には、これまで翻訳と校正(チェック)の2種類しかありませんでしたが、最近ここに新たに「ポストエディット」という作業が加わるようになりました。

ポストエディットとは?
ポストエディットとは、機械翻訳後の訳文をチェックする作業です。

近年Google翻訳をはじめとする機械翻訳の精度が上がり、実用に近いレベルで翻訳できるものも出てきています。

機械翻訳は、翻訳コストの削減に役立つ可能性があるため、翻訳サービスの利用頻度が高いクライアントでかなり注目されているようです。

ただ、機械翻訳にも弱点があり、単純な数値を間違えたり、訳語の統一が苦手だったりと、人間なら間違えないような箇所を間違えることがあります。

また、機械翻訳はまだ完成度が高くないため、最終段階ではどうしても人間の確認が不可欠です。

そこで登場するのが新たな職種「ポストエディター」!

ポストエディターは、機械翻訳後の訳文を納品前にチェックする業務を担当します。

最近はアメリアや、翻訳会社のホームページでもちらほらと求人をみかけるようになりました。

単価を見てみると、

  • 5円/ワード~
  • 時給1600~2000円(英日)
  • 7~10円(依頼案件・能力に応じる)(英日/日英)

のような例が見つかりました。

校正と同程度か、校正よりはちょっと高いかも・・・?

実はポストエディターは、翻訳未経験者よりも経験者向けの業務だと言われています。

というのも、近年の機械翻訳はかなり精度が高く、極めて自然な日本語に近い形で訳文を出力するからです。

訳文が流ちょうであるが故に経験の浅い翻訳者では正誤の判別がつけにくく、経験の豊富な翻訳者が必要とされています。

ただ、いくら機械翻訳の精度があがったとはいえ、しょせんは機械が出力した訳文

経験を積んだ翻訳者が長時間読むのは非常に辛いものがあります。

私も何度か読んだことがありますが、個々の訳文はある程度読めても、各文章がぶつ切れで論理展開が分かりにくく、すんなりと理解できないのです。

というわけで、ポストエディターは経験のある翻訳者には割と不人気です。

機械翻訳の需要が増え、ポストエディターの需要も高まってきている割にはなり手が少ないため、単価がやや高めに設定されているのではと感じました。

まとめ

今回はフリーランス翻訳者の単価について、詳しく見てきました!

一口に翻訳と言っても、どこを介してサービスを売るかで、あなたのスキルに支払われる対価がが大きく変わることにお気づきいただけたでしょうか?

せっかく苦労して高めたスキル、どうせなら高く売りたいですよね?

ただ、未経験のうちは応募できる企業や選択肢が少ないもの事実です。

あなたの今いるステージに応じて、今は何を優先すべきかをよく考え、まずはできることから取り組んでください。

その上で、最終的にはどうなりたいか、そのためにはどういう戦略を取ればいいかを具体的にイメージし、できることから行動に移していけば、気がつけばいつの間にか思い描いていた場所にたどり着いていると思いますよ!

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