翻訳者がトライアルを受けるときや転職活動時に出す「職務経歴書」。
これは、応募書類の中でもかなり重要な位置を占めています。
「職務経歴書」の書き方ひとつで、あなたの魅力や書類審査の合否が決まると言っても過言ではありません。
それなのに、その書き方やポイントを解説した情報って、案外少ないですよね?
この記事では、翻訳会社にこれまで20社以上応募したことがあるプロ翻訳者が、翻訳職に応募するときに職務経歴書のポイントを、どこよりも詳しく解説しています。
職務経歴書の書き方は、これさえ押さえておけばOK!
ぜひ参考にして、魅力的な職務経歴書を完成させてくださいね。
翻訳者が応募時に提出する書類3つ
ここから先「応募先/パターン別準備書類」までは、「履歴書の書き方」「翻訳実績の書き方」の記事と重複しています(この記事から読み始める読者さんに配慮しています)。
ほかの記事からリンクでとんできた方や、「もう読んだよ!」という方は、「職務経歴書作成の基本」まで飛ばしてください。
まず、翻訳者が応募時に提出する書類についておさらいしておきましょう。
翻訳者が応募時に提出する書類は、次の3種類です。
- 履歴書
- 職務経歴書
- 翻訳実績
それぞれ何が違うの?
そう思った方、いますよね?
それぞれの概要をざっと説明すると、こんな感じです。
- 履歴書
これまでの学歴や職歴、資格などを記入する
学歴や職歴については概要(社名や仕事内容、期間など)だけで、詳細は書かない
あなた自身を簡潔に紹介するプロフィールのような扱い
- 職務経歴書
主にこれまでの職歴を詳しく書いたもの
翻訳者志望なら、通学経験のあるスクール、使用しているPCやソフトなども記載する
翻訳者志望の場合、履歴書よりもこちらの方が重要度が高い
- 翻訳実績
主に実務経験のある人が作成する、これまで取り扱った翻訳案件の一覧
結構たくさんあるのね・・・
そうなんです。
それにどの書類も、用意するのにそれなりの手間がかかります。
応募先を決めてから準備・・・ではなかなか大変なので、時間に余裕のあるときに落ち着いて作成しておくことをオススメします。
この記事では、3つの書類のうち、職務経歴書にポイントを絞って解説しています。
他の書類の書き方についても知りたい!という方は、他の書類の書き方を解説したほかの記事を参考にしてくださいね!
応募先/パターン別準備書類
上で翻訳者が応募先に提出する書類3つを紹介しました。
ぜんぶの書類を用意しないといけないの?
いえいえ、そんなことはありません!
応募先やあなたに実務経験があるかないかで、提出する書類は変わってきます。
どの書類を用意するかについては、基本的に応募先から指示があるのでそれに従えばOK!
ただ、「あらかじめどんな書類が必要か知っておきたい」という人のために、下に応募先/パターン別の準備書類をまとめておきます。
履歴書 | 職務経歴書 | 翻訳実績 | |
---|---|---|---|
正社員 実務未経験 | ◎ | ◎ | × |
正社員 実務経験者 | ◎ | ◎ | ○ |
派遣 実務未経験 | × | × | × |
派遣 実務経験者 | × | × | × |
フリーランス翻訳者 実務未経験 | ◎ | ◎ | ◎ |
フリーランス翻訳者 実務経験者 | ◎ | ◎ | × |
◎=必須、○=なくてもよいがあるとベター、×=不要
派遣社員の場合、派遣会社のホームページ上で必要情報を入力するだけでOKなケースが多いため、履歴書や職務経歴書の提出は基本的には不要です(派遣会社によって異なります)。
職務経歴書作成の基本
では、いよいよ職務経歴書の作成!
・・・なのですが、
職務経歴書って何を書いたらいいの?
どんなフォーマットで作成するの?
こんな疑問をお持ちの方にむけて、まずは職務経歴書作成の基本的なポイントを解説していこうとおもいます。
作成フォーマットは?
職務経歴書は、基本的にA4サイズで作成します。
作成時はエクセル・ワードどちらを使っても構いませんが、翻訳会社や応募先企業に提出するときは、PDFに変換して送付しましょう。
このとき、A4での体裁がきれいに整っているように、見栄えを調整することも大切でだよ!
応募書類では、あなたがPCやソフトウェアをうまく扱えるかどうかも見られています。
体裁や文字サイズがぐちゃぐちゃだと、あなたのPCスキルが疑われてしまいます。
誤字脱字がないことはもちろん、体裁も見栄えよく整っていることを必ず確認してから先方に送るようにしましょう。
どんなことを書けばいいの?
職務経歴書に書くのは、主に次の5点です。
- 職務経歴
- 保有資格
- 翻訳学習歴
- 作業環境
- 自己PR
職務経歴・保有資格は履歴書と重複しますが、職務経歴書でももう一度書くのがお約束です。
職務経歴書では、履歴書よりもやや詳しく職務内容を書くことが多いです。
履歴書では書かないけれど、職務経歴書では書く項目は、翻訳学習歴・作業環境・自己PRの3つです。
翻訳学習歴には、あなたが翻訳学習に利用したスクールや講座名を記入します。
作業環境には、使用しているPCやOSのバージョン、翻訳支援ツールなど、翻訳作業で使用するPC関連の情報を記載します。
自己PRは、書いても書かなくても構いません。
書いた方がほかの応募者との差別化にはなりますが、ある程度(3年以上が目安)の翻訳実績がある場合は書かなくてもOKです。
わたしが最近トライアルに応募するときは、自己PRは書いていません
それでも書類審査で落ちることはないので、実務経験者はムリに書かなくてもOKです。
採用担当者は職務経歴書のココを見ている!
では、採用担当者は職務経歴書のどこを見ているのでしょうか?
基本的には次の4点であると考えて間違いありません。
- 専門分野に関係のある職歴があるか
- 翻訳学習歴があるか
- 実務に適した作業環境はあるか
- どんな翻訳支援ツールが使えるか
1つずつ解説していきます。
専門分野に関係のある職歴があるか
履歴書にも職歴を書く欄がありますが、職務経歴書にも職務経歴を書く欄があります。
採用担当者はこの欄を見て、あなたが応募している「専門分野」に関係のある職歴があるかどうかを確認しています。
たとえば、
- 医薬翻訳に応募しているならMRや製薬会社勤務の経験
- IT翻訳に応募しているならエンジニアの経験
があると有利です。
もし、あなたが応募する分野に関連のある職歴があるのなら、具体的に書いておきましょう。
書類審査で有利になる可能性大です。
「具体的に」書くのはいいけど、あれもこれもと詰め込みすぎて、冗長になったり読みにくくなったりしないように気をつけてね!
翻訳学習歴があるか
採用担当者は、職務経歴書であなたに「翻訳学習歴があるかどうか」を見ています。
特に未経験者の場合、しっかりとした翻訳学習歴があると、そうでない応募者よりも高く評価されます。
アメリアなどで「未経験者可」の求人を見ると、「未経験でもスクールでの学習歴があれば応募可」という条件が設定されていることが多いですよね。
それだけ、スクール通学歴というのは翻訳会社に評価されています。
もしスクール通学歴があるのであれば、積極的にアピールしておきましょう!
必ずプラスになりますよ!
実務に適した作業環境はあるか
採用担当者が職務経歴書でひそかに注目しているのがココ!
翻訳者にとって、PCは仕事道具です。
また、一人作業が多く、トラブルにも自前で対応する必要があるからこそ、翻訳者には最低限のITスキルやITリテラシーが求められます。
- あなたは、自分のPCのOSやスペックを知っていますか?
- 基本的なソフトウェアを使いこなせますか?
もし不安があるなら、翻訳者デビュー前の時間があるときに、一通り知識を身につけておきましょう。
翻訳には基本的に高性能なPCは必要ありませんが、最低限の機能は必要です
特にセキュリティ面ではしっかりとした対策が求められるので、サポートの終わったOS(Windows 7など)を使っているのは論外です。
また、翻訳にはWordを多用します。
そのほかに、ExcelやPowerpointなども比較的高頻度で使います。
採用担当者は、作業環境の欄であなたのPCやソフトウェアが作業に適したものであるかどうか、また最低限のPCスキルがありそうかを判断します。
サポートの切れたOSを堂々と書いていたり、あまりにもバージョンの古いWordやExcelが書かれていると、担当者が不安になっても仕方ありませんよね。
常に最新とまではいかなくても、少なくともセキュリティ面が担保された作業環境が準備できていることをアピールしましょう!
どんな翻訳支援ツールが使えるか
翻訳には、特定の翻訳支援ツールを使うことがよくあります。
代表的な翻訳支援ツールは、
- TRADOS
- Memsource
- memoQ
の3つです。
IT系の翻訳者を目指すなら、Tradosはあった方がいいでしょう。
IT系以外を目指す場合でも、翻訳支援ツールを持っていてマイナス評価になることは基本的にはありません。
持っている場合は必ず記載しましょう。
翻訳支援ツールを持っている翻訳者は、どちらかといえば少数派です。
翻訳支援ツールは高額なものが多いので(TRADOSで約9万円)、翻訳会社の方でも翻訳者に「買ってください」とはお願いしにくく、翻訳者の方でもある程度軌道に乗っていないとなかなか購入しません。
だからこそ、持っていると喜ばれるんだね!
書類審査でも有利に働くことが多いと思うので、もしある程度の自己投資が可能なら、試しに購入してみて使い方を勉強するのもいいかもしれません。
職務経歴書作成のポイント
では、いよいよ職務経歴書の書き方の説明に入ります!
実際の書き方例を紹介しながら進めるので、ぜひ一緒に作成しながら読んでみてくださいね。
見栄えを意識する
職務経歴書の各項目の書き方について説明する前に、まずは全体的な注意事項です。
職務経歴書を書くときは、表やインデントを適宜使用して、「どこに何が書いてあるか分かるように」「読みやすいように」見栄えを考えて作成してください。
翻訳会社への応募書類では、あなたのWord文書作成スキルやPCスキルも評価されています!
このことを無視して、「ただ経歴を羅列しただけ」「言いたいことを書いただけ」では、書類審査は通過しません。
よく言われることですが、応募書類はあなたの「顔」と同じです。
なるべくきれいなものを提出するようにしましょう。
職務経歴の書き方のポイント
職務経歴書のトップに書くのは、あなたの「職務経歴」です。
履歴書と同じで、あなたが応募する専門分野に関連する経歴がある場合は、なるべく詳しく書きましょう。
仕事で扱った専門文書やマニュアルなどがあれば、それも書いておくといいでしょう。
たとえば、
- 何らかの機器を扱っていたのであれば、その具体的な内容(精密機器か工作機器か)
- ユーザーマニュアルに関わっていたのであれば、何のマニュアルかや言語方向
- 証券会社でレポートを作成していたのなら、そのレポートの種類 など
ポイントは、
職務経歴書を読んで、応募者に依頼できそうな仕事を採用担当者がイメージできるかどうか
ということです。
あなたの得意分野がはっきりしているほど、採用者は具体的な案件をイメージできます。
そうすると採用後も依頼につながりやすいので、あなたの経歴をしっかりと棚卸しして記入しておきましょう。
海外赴任の経験や社費留学の経験があれば、記入しておくと高評価につながりますよ!
【職務経歴書の書き方例】
翻訳学習歴の書き方のポイント
翻訳学校に通った経験があるのであれば、通学歴を記入しましょう。
もちろん、通信講座でもOKです。
翻訳学習歴の書き方のポイントは、次の4つです。
- 通学か通信かを明記する
- 受講時期/受講期間を明記する
- 受講した講座の分野とレベルが分かるように書く
- 修了したかどうかを明記する
特に、受講した講座の内容とレベルをはっきりと書くのが重要です。
専門的な内容を学ぶコースと入門コースでは、学習内容が大きく違うからです。
複数受講したのであれば、時系列に複数の学校を記載してOKです。
【翻訳学習歴の書き方例】
こんなときどうする?
- 翻訳学校通学歴がありません・・・
翻訳学校への通学歴がない場合は、どんな教材を使って学習したのかを、要点を絞って書きましょう。
たとえば、
- 使用した書籍
- アメリア定例トライアルなどに挑戦したのであれば、その時期と評価
- 翻訳コンテストなどの応募歴
などです。
ある程度的を得た学習をしているのであれば、翻訳スクール通学と同程度に評価してもらえるかもしれません。
少なくとも何も書かないよりはいいので、うまく工夫してアピールしましょう。
保有資格の書き方のポイント
次に、保有資格です。
ここには語学系の資格や専門分野に関係する資格を記入します。
基本的には、履歴書に書いた内容をそのまま書いておけばOKです!
もし所属団体(JTFやJATなど)があると、それもここに書いておくといいでしょう。
TOEICスコアが低いときや、TOEICスコアが古いときの対処方法については、履歴書の書き方の記事で解説しています。
気になる方は合わせて読んでみてください。
【保有資格の書き方例】
作業環境の書き方のポイント
作業環境については、次の3点について書きます。
- OSとそのバージョン
- 使用しているソフトウェア(主にOffice系ソフト)とそのバージョン
- 翻訳支援ツール
OSは、WindowsでもMacでもOKです。
ただ、既にサポートが終了しているOSを使っていると、大きく減点される可能性が高いです。
必ずサポートが提供されているOSを使用してください。
ちなみに、デスクトップ・ノートPCはどちらでもOK!
好みやライフスタイルに合わせて選んでね
使用しているソフトウェアは、主にOfficeソフトウェアについて記入します。
翻訳でよく使用するソフトウェアは、主に次の3つです。
- Word
- Excel
- PowerPoint
特にWordとExcelが使えれば問題がないケースが多いので、使えるのであればしっかりアピールしましょう。
また、同時にバージョンについても記載します。
バージョンなんて分からない・・・
という方は、以下のサイトを参考にして確認してください。
このほか、
「Word バージョン 確認」
「Excel バージョン 確認」
などのキーワードでググっても確認方法が分かるので、ぜひやってみてくださいね!
最後に、翻訳支援ツールです。
こちらについても、使用している(できる)翻訳支援ツールとバージョンを記入します。
あると有利になる可能性が高いので、使用できるツールがある場合は必ず書いておいてね!
このほか、雑誌などでは「セキュリティソフトも記載するとよい」と書いてある場合があります。
ただ、最近はOSに基本的なセキュリティ対策がされており、定期的にOSのアップデートさえしていれば、特にセキュリティソフトを使っていなくても問題のないケースがほとんどです。
セキュリティに特別に気を使っている場合や、何らかの有料ソフトを利用している場合は書いてもOKですが、書かなくても不利にはなりません。
私も書いていませんが全く問題ないです
【作業環境の書き方例】
自己PRの書き方
自己PRですが、実は書いても書かなくてもOKです。
職務経歴〜作業環境まで書いても十分な余白がある場合は、自己PRを書いて余白を埋めるのはおすすめです。
ただ、職務経歴〜作業環境を書いてA4がちょうど埋まる場合やA4一枚を超えてしまう場合は、あえて書かない選択もアリです。
絶対書かなきゃいけないってことではないのね!
私は職務経歴〜作業環境でA4が埋まるので、最近は自己PRは書いていません。
それでも書類審査で落ちることはないので、ある程度実務経験があると、自己PRがなくても問題ないと考えられます。
ただ、書いて減点になることはないので、少しでも採用担当者の印象をよくしたい人やアピールしたいことがある人は、書くといいでしょう。
その時のポイントは、
- 自分の職歴・学習歴などから対応できる分野を簡潔に書く
- 普段翻訳で心がけていることなどを併記する
- 長くなりすぎない
の3つです。
採用担当者は、たくさんの応募書類に目を通しています。
あまりに長々と書いても読んでもらえないので、あくまで簡潔に、長くとも4~5行以内に収まるように書くのがおすすめです。
【自己PRの書き方例】
メール送付時はPDFに変換する
先方に添付ファイルとしてメールで送付する場合、基本的にはPDFに変換して送ります。
今は、WordファイルからでもExcelファイルからでも簡単にPDFに変換することができます。
「Word PDF 変換」
「Excel PDF 変換」
などでググるとやり方が出てきますので、ぜひ挑戦してみてくださいね!
まとめ
今回は、職務経歴書の書き方について詳しくまとめてみました。
職務経歴書は、書類選考の肝ともいえる重要な書類です。
ぜひじゅうぶんな時間を取って、じっくりと取り組んでみることをおすすめします。
応募の際に必要なほかの書類については、別の記事で紹介しています。
ぜひこちらも参考にして、あなたの魅力を最大限にアピールする応募書類を作成してくださいね!
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