翻訳者を目指しているなら一度は通学を検討する翻訳学校。
通って本当に効果があるの?
卒業後はプロになれるの?
独学じゃダメなの?
高くない費用がかかるだけに、いろいろ気になりますよね。
この記事では、翻訳学校3校に通ったことのあるプロ翻訳者が、翻訳学校って結局どうなのよ?という疑問に徹底的にお答えします!
- スクールではどんなことを勉強するの?
- スクール卒業後の進路は?
- 自宅での学習時間はどれくらい必要?
- 通っているのはどんな人?
翻訳学校への通学を迷っている方は、是非判断材料にしてくださいね!
翻訳学校で学べること
翻訳学校には通常レベルに応じた講座が用意されています。
スクールによって名称は様々ですが、おおむね以下の3つのパターンに分類できます。
- 入門/基礎コース
→翻訳者に必要な英語の基礎力をつけるコース - 初級コース
→翻訳の基礎的な作法を学習するコース - 中〜上級コース
→専門分野に分かれ、分野に応じた翻訳技術を学習するコース
この他に、各分野のより細かなニーズに特化した専門性の高い講座を設定しているスクールもあります。
入門/基礎コースや初級コースまでは講座の受講条件を設定していないスクールが多く、誰でも受講することができます。
一方で、実務翻訳コースは高い英語力が求められることが多く、TOEICであれば750点以上が目安になります。
入門コースの学習内容
入門コースの目的は、基礎的な英語力を固めることです。
翻訳という仕事には、英文を正しく読み取る力が欠かせません。
その基礎となるのが文法力であり、正確な文法理解なくして正しい翻訳はできません。
このため、多くの翻訳学校では、翻訳の入口となる入門コースで文法を重点的に取り扱っています。
例えば、サンフレアさんの初級講座では以下のような内容を扱っています。
↓ サンフレアアカデミー:初級講座「はじめての翻訳文法」
基礎的な文法理解は英訳・和訳ともに必須の力になるので、ここに不安のある方は受講を検討するとよいでしょう。
初級コースの学習内容
初級コースの目的は、翻訳の基礎的な手法を身につけることです。
翻訳というのは、いわゆる学校英語で習った「英訳」「和訳」とは異なります。
例を出しましょう。
例文:This is my younger sister.
「これを日本語に訳しなさい」という問題が出たとき、あなたならどう答えますか?
おそらく日本人の大半は、「これは私の妹です」と訳すのではないでしょうか。
当然間違いではありません。
英語を一字一句そのまま日本語にすると、「これは私の妹です」となります。
学校英語ならこれで○をもらえるでしょう。
でも翻訳ではこの回答は×です。
なぜか?
ここで、この英語が使われる状況を想像してみましょう。
シチュエーションA:
妹と外出しているときに偶然知り合いに会った。
知り合いは妹を知らなかったので、妹を紹介した。
シチュエーションB:
友達に写真を見せていて、そのうちの1枚に妹が写り込んでいた。
「誰?」と聞かれたので紹介した。
こんな場面が想像できるのではないでしょうか?
そんなとき、あなたはなんと言うでしょう?
「これは私の妹です。」と言うでしょうか?
おそらく言わないでしょう。
大半の人は、以下のように答えるのではないでしょうか。
A: 「妹です」
B: 「妹だよ」
ポイントは2つあります。
・こういう状況では、主語(「これは」)は省略する
・相手によって語尾が変わる
たったこれだけの文章でも、その言葉が使われたシチュエーションによって、訳し方は何通りも考えられます。
翻訳をするときには、上の例のように「自然な日本語表現を使う」ほかにも、動名詞や無生物主語の訳し方、受動態の訳し方など、これまで習ってきた学校英語とは違う、翻訳ならではの考え方や技法というものがいくつも存在します。
初級コースではこのような翻訳のルールに焦点を当て、基本的な翻訳技法を身につけることに主眼を置いて学習を進めます。
中~上級コース
翻訳には、大きく分けて以下の3つのジャンルがあります。
出版翻訳:
文芸書や児童書などの書籍を翻訳する
実務翻訳:
企業の内部資料や外部に公表する資料など、ビジネスで使う文書を翻訳する。
この中でさらにITや契約書、医学、特許などの各分野に分かれる。
映像翻訳:
映画やテレビ番組、動画などの台詞や字幕を翻訳する
翻訳のジャンルについては以下の記事でも解説しているので、詳しく知りたい方は参考にしてください。
参考:翻訳の3つの種類
中〜上級コースでは、この各ジャンルに特化した内容を学習します。
ただし、スクールによっては初級コースからジャンルに分かれ、ジャンルに特化した内容を学習するところもあります。
翻訳というのは、分野によって使うツール(ソフトウェア)が違います。
また、必要となる背景知識や理解しておくべき専門用語も違います。
プロになるためには、基本的な翻訳作法にプラスして、各ジャンルに応じた深い専門知識が必要になります。
中〜上級コースでは、このような専門知識にフォーカスを絞って学習を進め、より深い業界知識に基づいた利用価値の高い翻訳ができるところまでスキルを磨きます。
また、難易度の高い文章を翻訳するには、分からない部分を自分で調べていく調査能力が不可欠です。
最近はGoogle検索を使うことが多くなりましたが、Google検索の中には信頼性の低い情報も含まれています。
中~上級コースでは、信頼性の高い情報の見分け方や、効率的・効果的な調べ物の仕方についても、第一線で活躍するプロから学ぶことができます。
スクール卒業後の進路
中〜上級コースを卒業し、十分な英語力が身についていれば、卒業後はプロとして働くことができます。
卒業後の進路は主に3つあります。
- フリーランスになる
- 社内翻訳者になる(正社員・派遣)
- コーディネーターになる
1つずつみていきましょう!
フリーランスになる
スクールの中には、卒業後に提携企業のトライアルを受けられるところがあります。
通常トライアルの受験には実務経験が必要ですが、スクールと提携している企業の場合、未経験でもトライアルを受験することができます。
この点は、スクール通学の最も大きいメリットです。
トライアルに合格すれば、フリーランス翻訳者としてデビューできます。
社内翻訳者になる
スクールを卒業後、派遣会社や転職エージェントに登録して、社内翻訳者になる方もいらっしゃいます。
大手のスクールの場合、企業に人材紹介を行っている場合も多く、スクールの紹介で仕事を始める方もいます。
もちろん自分で求人を探して応募することもできます。
コーディネーターになる
コーディネーターとは、翻訳会社に在籍して翻訳者と案件のマッチングを行うポジションです。
案件が発生したら、適任の翻訳者を探し、案件を依頼します。
スクールの卒業生の中には、コーディネーターになる方もいらっしゃいます。
翻訳に対する基本的な理解があることは、コーディネーターの仕事をする上で大きなメリットになりますので、是非進路の1つとして検討するとよいでしょう。
スクール卒業後に受講生がどんな仕事をしているかについては、フェローアカデミーさんのページに様々なケースが紹介されています。
気になる方は一度チェックしてみてください!
スクール通学中の学習時間
当たり前ですが、スクールに通うだけではスキルは身につきません。
スクール通学中には以下のような自主学習が必要になります。
前回の授業の復習:
・前回の授業でやった内容をまとめる
・授業の学習内容を踏まえて、課題文をもう一度訳してみる(または修正する)
・理解が足りていないと感じるところを、詳しく調べて整理する
授業の予習:
・次回授業でやる内容を確認し、不明点については調べておく
・課題文を自分で翻訳する
・翻訳した内容や訳語について、なぜそれを選んだか説明できるようにしておく
・必要な場合は課題文を締切までに先生に提出する
どうですか?意外とやることがたくさんありますよね。
初心者のうちは、課題文の翻訳にかなり時間がかかります。
知らないことが多く、調べ物だけで膨大な量になるからです。
もちろん大変ではあるのですが、スクールでの課題は実際の案件の予行演習です。
実際にお仕事を受けるようになると、「授業の予習」に挙げたような作業が毎回求められます。
ここに本気で取り組んでおけば、プロデビュー後もあわてることなくスムーズに作業を進めることができるので、大変ではあるけれど我慢のしどころだと思って取り組んでください!
ちなみに私がスクールに通っていた頃は、毎日2時間程度は勉強していました。
ただ、これは少ない方だと思います。
実際、卒業後すぐにプロの翻訳者として引っ張りだこになった方は、寝食惜しんで課題文の翻訳をしていたと聞いたことがあります。
さすがにそこまではムリでも、できるかぎり多くの時間を割いた方が、最短ルートで翻訳者になれることは間違いありません。
また、授業で学習した内容はしっかりとまとめておくことをオススメします。
実際に仕事を始めてから、めちゃくちゃ重宝するからです。
仕事を始めると、案件に手一杯になってなかなかゆっくりまとめる時間が取れません。
時間があるうちにしっかりとやっておくといいですよ!
通学者の年齢層
スクールって、どんな人が通っているのか気になりますよね?
私が通っていた頃は、比較的年齢の高い方(30代後半以降)が多く、20代〜30代前半の若い方は少ない印象でした。
通学当時、私は30代前半でしたが、多分クラスで一番若かったです。
受講しているコースにもよりますが、通学している方のニーズと年齢層は主にこんな感じです↓
・子どもに手がかからなくなってきたので、翻訳を始めたい女性(30〜40代)
・今の仕事からキャリアチェンジしたい方(30代以降男女)
・定年を見据え、年金生活の足しに翻訳をしたい中高年(50代以降男性)
30〜40代くらいの男性サラリーマンは少なく、1が半分、残りの半分が2と3といった印象でした。
女性が多いけど、男性も一定数通っているんだね!
まとめ
翻訳学校がどんなところか、具体的にイメージしていただけたでしょうか?
翻訳スクールは、確かにお金も時間もかかります。
ただ、スクールで学習することをすべて独学で学ぶとなると、かなり遠回りになってしまうのも事実です。
プロ翻訳者として活躍するためのスキルを効率よく身につけたい、プロの技に触れたいと思っているなら、スクールはとても役立ちます。
1人で勉強するよりも、実際10倍は学習がはかどります。
最短距離で翻訳者になりたい方には断然オススメですよ!
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