翻訳者を目指す人なら、一度は「翻訳者ディレクトリ」というサイト名を聞いたことがあるのではないでしょうか?
翻訳者ディレクトリは、無料で翻訳関係の求人を探せるサイトとして、翻訳者の間では有名です
でも、無料であるが故に、気をつけなければならないポイントもいくつかあります。
この記事では、便利な「翻訳者ディレクトリ」を利用するときに気をつけるポイントや、求人の探し方などについて解説しています。
これから利用する人も、もう利用している人も、内容を十分に理解して安全に利用してくださいね!
翻訳者ディレクトリとは
翻訳者ディレクトリとは、無料で翻訳関係の求人を探せる求人情報サイトです。
かなりの数の求人が掲載されており、2021年3月21日時点の求人掲載件数は、なんと15,704件となっています。
ただ、この数値には、既に募集が終わっている求人も含まれています
実際に募集中の最新求人数は、およそ100件程度ではないかと思われるので、この点は注意してください!
求人情報は非常に頻繁に更新されています。
そういった意味では、サイトの管理はきちんとされていると言えるでしょう。
翻訳者ディレクトリを使うメリット・デメリット
では、翻訳者ディレクトリにはどんなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
この項目では、この業界で10年働いているプロ目線で、翻訳者ディレクトリのメリット・デメリットについてお伝えしていきます!
メリット
まずはメリットです。
翻訳者ディレクトリには、主に次の3つのメリットがあります。
- 無料
- 求人情報量が多い
- 英語以外の求人情報が多い
1つずつ見ていきましょう!
無料
翻訳者ディレクトリの最大のメリットは、「無料で使えること」です。
翻訳者ディレクトリでは、翻訳求人を見るのにお金は一切かかりません。
また、翻訳者として情報を登録する場合も、掲載されている求人に応募する場合にも、追加費用は不要です。
つまり、翻訳者ディレクトリは完全無料のサービスなんです!
仕事の獲得にお金をかけたくない人には、ベストなサービスだと言えるでしょう。
求人情報量が多い
無料で利用できる翻訳求人サイトはほかにもありますが、翻訳者ディレクトリは圧倒的に求人数が多い!
無料なのに常時100件近くの新着求人が掲載されているので、翻訳の仕事を探している方には本当に便利です。
とにかくいろんな求人を見てみたいという方にはイチオシです!
英語以外の求人情報が多い
英語以外の求人情報というのは、数が少なく探すのが大変です。
でも、翻訳者ディレクトリは英語以外の求人情報がかなり豊富です
ざっと見ただけでも、
- タガログ語
- ベトナム語
- 韓国語
- タイ語
- ポルトガル語
- 中国語
- ミャンマー語
など、さまざまな言語の求人が掲載されています。
もちろん英語の求人もたくさんありますし、正社員案件も掲載されています!
どんな職書・言語の求人でも幅広く用意されているのが、翻訳者ディレクトリの魅力と言えますね。
デメリット
では、翻訳者ディレクトリのデメリットとはどのような点でしょうか?
主なデメリットは次の3つだと考えています。
- 翻訳会社の信頼性が不明
- トラブルがあっても自己責任
- 検索の使い勝手が悪い
1つずつ解説していきますね!
求人情報・翻訳会社の信頼性が不明
翻訳者ディレクトリに掲載されている求人の募集者名(社名)を見ると、正直知らない会社が多いです。
これでも10年はこの業界で働いているので、ある程度名の知れた翻訳会社の社名は知っているつもりです。
翻訳者ディレクトリには、このようないわゆる「名の通った」翻訳会社の求人もありますが、それと同じくらいに知らない会社の求人も多いです。
海外の会社も多い印象です。
もちろん、「知らない会社=悪い会社」ではありません
小さな会社にもいい会社はあるでしょう。
でも、フリーランス翻訳者はいかんせん立場が弱い。
だからこそ、「信頼できる会社」「名の知れた会社」と付き合いたいとわたしは思っています。
というのも、フリーランス翻訳者って、翻訳料金を踏み倒されることがあるんですよ・・・
そして、踏み倒すような会社はたいてい小さい会社、名前も聞いたことのような会社です。
もともと企業体力がないから資金繰りがうまくいかなくて払えない・・
なんてこともあるでしょうし、もともと払う気のないような悪徳業者も中にはいます。
もし料金を踏み倒されても、フリーランスだと一人で戦わないといけません。
戦うとなれば、手間も時間も、そして費用がかかることだってあります。
考えただけでも面倒じゃないですか?
わたしはそんな面倒はやりたくないし、できれば事前に避けたいと思っています。
だからこそ、求人に応募するときには、「信頼できる会社」「大きな会社」を選んでいます。
翻訳者ディレクトリは求人数こそ多いものの、「誰でも」求人を投稿できるメディアなので、求人情報を掲載している企業の信頼性がまったく分かりません。
応募するときには自分でその都度企業の信頼性を確認する必要があり、この「確認の手間が都度かかる」のが翻訳者ディレクトリの大きなデメリットです。
トラブルがあっても自己責任
翻訳者ディレクトリは、あくまで求人情報を掲載しているだけのサイトです。
なので、もし応募先企業と何らかのトラブルがあっても、何の対応も期待できません
無償で運用されているサイトなので、さすがにそこまで期待するのは無理というもの。
とはいえ、求人を掲載している会社の信頼性が分からず、さらにはトラブルがあっても自己責任となれば、利用する側はかなり慎重にならざるを得ません。
翻訳者ディレクトリを利用するのであれば、この点について十分に理解した上で利用することをお勧めします。
検索の使い勝手が悪い
翻訳者ディレクトリにはかなり多数の求人が掲載されています。
求人数が多い場合、自分の希望する条件で絞り込んで検索をするケースが多いと思いますが、この検索が使いづらい!
基本的には検索したい条件をキーワード検索欄に入力して検索するのですが、自分で条件を入力しないといけないので、どういった切り口で検索できるのかが分からない人や、初心者には使い勝手がよくありません。
また、除外検索(~は含まない)や募集期間を区切っての検索ができないので、古いデータや既に応募が終了した案件まで出てきてしまいます。
「常時募集」とはいえ数年前に掲載された求人なども出てくるので、どの案件なら応募できるかについては、応募者側で判断する必要があります。
以上のように、翻訳者ディレクトリには「無料であるがゆえに手の届かない部分」が多い印象でした。
ただ、求人数自体は豊富ですので、自分の側で翻訳会社のチェックをする手間暇があるのかどうか、またトラブルなどのリスクを受け入れられるかを十分に検討した上で利用するのがオススメです!
ほかの求人情報サイトとの比較
国内の大規模な翻訳求人サイトには、ほかにアメリアがあります。
翻訳者の間では、翻訳求人数の多いサイトといえばアメリアか翻訳者ディレクトリというくらい、この2つは有名です
アメリアについてはほかの記事でも詳しく取り上げています。
詳細を知りたい方は、ぜひ読んでみてくださいね。
ここでは翻訳者ディレクトリとアメリアの特徴を比較します。
ぜひ参考にして、あなたにぴったりなサイトを選んでください!
項目 | 翻訳者ディレクトリ | アメリア |
---|---|---|
求人数 | 15,704件 (募集が終了している求人も含む) | 201件 |
料金 | 無料 | 年16,500円 |
翻訳会社の信頼性 | △ | ◎ |
他言語求人 | 比較的多い | 比較的少ない |
海外企業の求人 | 比較的多い | 少ない |
トラブル時の対応 | なし | 一部あり |
ほかのコンテンツ/サービス | なし | あり (スキルアップや各種情報提供) |
(求人件数は2021年3月22日時点のもの)
1項目ずつカンタンに説明しますね!
求人数
2021年3月22日時点の求人掲載数は、アメリアが201件、翻訳者ディレクトリが15,704件です。
ただ、翻訳者ディレクトリの掲載数には既に募集が終わった求人や、かなり古い求人も含まれています。
実際の有効求人数は、両者とも同程度だと考えられます。
料金
翻訳者ディレクトリは完全に無料のサービスですが、アメリアは有料のサービスです。
アメリアは年会費16,500円がかかりますが、求人以外にもコンテンツが充実しており、スキルアップやTOEIC割引などのサービスも受けられます。
翻訳会社の信頼性
翻訳者ディレクトリは、ホームページと固定電話さえあれば求人が掲載できます。
一応掲載の審査はありますが、翻訳関連事業をしていれば、そこまで審査は厳しくないのではと推測されます
アメリアの場合、求人情報を登録するにはまずアメリアに協力会社として法人登録する必要があります。
審査を依頼するときは、求人の詳細はもちろん、翻訳者の待遇や応募条件、選考結果通知期限や支払方法・スケジュールまで、かなり細かく申告する必要があります。
さらに、審査の度に審査料30,000円がかかり、審査料は不合格になっても返金されません。
どの程度で不合格になるかは分かりませんが、少なくとも有料サービスを提供している手前、アメリア事務局側で信頼性が低いと判断された企業は登録できないと考えられます。
他言語求人
2021年3月22日時点で、英語以外の言語での求人数は、アメリアで28件でした。
翻訳者ディレクトリは、「英語を含まない」の条件で求人検索ができないので具体的な求人数は分かりませんが、ざっと見たところアメリアよりも多い印象でした。
印象としてはアジア系の言語が多く、言語の比率としては
英語:その他言語=6:4
くらいかと思われます。
海外企業の求人
アメリアは、海外企業の求人はさほど多くありません。
全体の1割くらいの印象ですが、これはやはり厳正な審査が必要であったり、そもそもアメリアに英語版のサイトがないためだと考えられます。
一方で翻訳者ディレクトリは、海外企業の求人が多く、海外求人の割合は全体の2~3割かそれ以上の印象です。
海外企業の求人の場合、日本人の競合が少ないというメリットはありますが、企業の信頼性チェックに日本企業以上に手間がかかるデメリットがあります。
トラブル時の対応
翻訳者ディレクトリでは、基本的に応募先とトラブルが起きても対応してもらうことはできません。
翻訳者ディレクトリのページにも、以下のように明記されています。
すべての取引業務は当事者間で行っていただきます。取引の結果、万一何らかのトラブルが発生した場合は、当事者間で穏便な解決をはかってください。翻訳者ディレクトリ管理グループは原則として関知いたしません。ただし、トラブル発生の報告は受け付けています。できるだけ公平な視点で詳細な事実関係をお知らせください。
翻訳者ディレクトリホームページより
一方で、アメリアではトラブル発生時の対応について、以下のように記載されています。
仕事に関するトラブルは会員の皆様とご利用企業・団体との双方で解決に向けた努力を行ってください。但し支払い不履行等の問題が発生した場合は、速やかにアメリア事務局までご一報ください。アメリア事務局にて状況を確認の上、悪質なご利用企業・団体については協力関係を終了する等の措置をとります。またアメリアは経済産業省許可の社団法人翻訳連盟の法人会員です。トラブルが起きた場合には日本翻訳連盟の「トラブル解決委員会」に解決を依頼する場合があります。
アメリア「JOB利用上の注意」より
基本的には個人で対応するというスタンスは同じですが、アメリアでは、悪質な場合は翻訳会社の登録が取り消されます。
これは、被害を受けている当人にはあまり関係のないことかもしれませんが、当該企業からの追加被害を受けることがなくなるうため、全体としてはメリットになります。
また、日本翻訳連盟の「トラブル防止委員会」に解決を依頼することにより、相手側企業に何らかの組織的な圧力が働く可能性もあります。
ただ、支払不履行の問題はかなり対応が難しく、解決までにかなりの手間や費用がかかることが大半です
なので、そもそも信頼できない会社とは取引をしないという未然防止策の方が大切です。
他コンテンツ・サービス
翻訳者ディレクトリは翻訳求人の提供のみで、他のサービスはありません。
一方でアメリアは、他にもスキルアップや情報提供などのサービスを実施しています。
アメリアのサービスについては、以下の記事を参考にしてください。
翻訳者ディレクトリの使い方
ここでは、翻訳者ディレクトリの使い方について説明します。
翻訳者が翻訳者ディレクトリを利用するのは、主に次の2つのケースです。
- 求人に応募する
- 翻訳者情報を登録する
1つずつ具体的に解説していきますね!
求人に応募する
まず、求人に応募する方法について解説します。
翻訳者ディレクトリでは、掲載されている求人に自由に応募することができます。
手順はカンタン!
- 求人を探す
- メールで必要書類を送付する
この2STEPだけです!
1)求人を探す
翻訳者ディレクトリの求人は、TOPページのこの部分から探します。
「翻訳者募集情報を閲覧する」をクリックすると、下のようなページが開くので、希望する条件に合う求人を探します。
このとき、「募集期限」の欄をチェックしてください。
この欄に「募集終了」と記載されているものは、募集期限が過ぎているため応募することができません。
求人は、キーワードで検索することもできます。
キーワードで検索する場合は、ページトップの「キーワード検索」をクリックします。
検索窓に検索したい条件を入力し、「検索」をクリックします。
複数のキーワードで検索したい場合は、スペースで区切って入力します。
2)メールで必要書類を送付する
応募したい求人を見つけたら、応募方法を確認します。
通常、何らかの書類をメールで送付する手順になっています。
メールでの書類送付が必要な場合、右側の「mail」をクリックします。
求人情報の詳細が表示されるので、「メール」欄にあるボタンをクリックします。
あなたが普段使っているメーラーが立ち上がるので、必要書類を添付して送信します。
翻訳者情報を登録する
翻訳者ディレクトリでは、あなたの情報を登録して企業からの連絡を待つこともできます。
登録には費用はかかりません。
翻訳者ディレクトリのこちらをクリックすると、登録している翻訳者の情報が確認できるので、参考に見てみてくださいね!
翻訳者ディレクトリへの登録は、次の手順で行います。
登録申込みフォーム記入 ⇒ 申込み受付 ⇒ SMS認証 ⇒ 証明書類審査 ⇒ 登録完了
順番に説明していきますね!
翻訳者ディレクトリに情報を登録するには、TOPページから「ディレクトリに登録する」をクリックします。
規約が表示されるので、内容をよく読んでください。
規約に同意できる場合のみ、「以上の利用規約に同意して登録申込手続きを行う」をクリックします。
登録申込みフォームが開くので、必要事項を入力します。
自己PRや既得資格の欄は、ほかの登録者の内容を参考にして入力するのがオススメです。
注意事項は次の4点です。
- 1)emailアドレス設定
「掲載しない ※翻訳者ディレクリのWebフォームで受付ける」がオススメです。
誰もがアクセスできるサイトに個人の電話番号を公開するのは危険ですので、絶対にやめましょう。
- 2)居住地域
申込みフォームにも書かれていますが、詳しく書く必要はありません。
○○県まででOKなので、間違っても番地まで書かないようにしましょう。
- 3)連絡方法
「E-mail」がオススメです。
「電話」にすると、電話番号の記載(公表)が必要になります。
上にも書きましたが、電話番号を公表するのは危険なのでやめておきましょう。
- 4)電話番号
ここに番号を入力すると、サイト上で公開されてしまいます。
必ず空欄にしておきましょう。
入力が終わったら、「利用規約に同意して登録申込み内容確認に進む」をクリックします。
登録申し込みフォームに記入すると、サーバーからの自動送信メールが届きます。
この時点で申し込み受付完了です。
半日~1日ほどで、SMS認証のご案内メールが届くので、指定の方法でSMS送信をしてください
SMS認証が完了すると、登録審査に移ります。
指定の方法で証明書類を提示してください。
証明書類を提示して登録審査を通過すれば登録完了となり、登録情報の掲載が開始されます。
翻訳者ディレクトリを使うときに注意したいこと2つ
ここでは、翻訳者ディレクトリを利用するときに気をつけたい注意点をご紹介します。
主な注意点は次の2つです。
- 個人情報の登録には注意する
- 翻訳会社の信頼性は必ず確認する
1つずつ解説していきます!
個人情報の登録には注意する
翻訳者ディレクトリに情報を掲載する場合は、個人情報の公開範囲に十分気をつけましょう。
翻訳者ディレクトリは、誰もがアクセスできるサイトです。
このようなサイトに個人の電話番号やメールアドレスを掲載してしまうと、悪用される可能性が十分にあります
翻訳会社からの依頼は、なるべく翻訳者ディレクトリのWebフォームで受け付けるようにし、個人情報の公開は最小限に抑えましょう。
また、翻訳者ディレクトリは善意の団体によるボランティア事業です。
個人情報保護などにいくら注意を払っていても、個人情報が流出する可能性はゼロではありません。
このような場合でも、責任を問うことができない点には注意しましょう。
また、翻訳者ディレクトリに情報を掲載するときには、あなたの証明書類を提示する必要があります。
運営主体が不透明な団体にあなたの証明書類を提示するリスクについても、十分に考えておく必要があります。
以上のようなリスクとメリットをよく検討し、それでも利用するメリットがあると判断した場合にのみ翻訳者ディレクトリを利用することをオススメします。
翻訳会社の信頼性は必ず確認する
これは上でも何度も書きましたが、翻訳者ディレクトリに掲載されている求人に応募するときには、掲載企業の信頼性を十分に確認しましょう。
翻訳者の世界では、案外頻繁に未払いの問題が起きています。
私もこれまで幾度となく未払いの話を見聞きしてきましたし、わたしも被害にあったことがあります
フリーランス翻訳者は、一人で戦うにはあまりにも立場が弱い存在です。
特に未払いが少額の場合は、かける手間や時間、費用を考えるとどうしても泣き寝入りになってしまいます。
応募する企業の信頼性を確かめることは、翻訳者として基礎中の基礎です。
ただ、企業の信頼性調査は手間がかかるのも事実です。
いちいち翻訳会社の信頼性を確かめるのが面倒なのであれば、あらかじめサイト側で翻訳会社の審査をしてくれているアメリアなどのサービスを利用することをオススメします。
まとめ
今回は翻訳者ディレクトリの使い方や、メリット・デメリットについてお伝えしてきました。
翻訳者ディレクトリは、求人数が多いのに利用料がかからないとても魅力的なサービスですが、無料であるがゆえに次のような欠点があります。
- 翻訳会社の信頼性が不明
- トラブルがあっても自己責任
- 検索の使い勝手が悪い
特に翻訳会社の信頼性は、新たな翻訳会社を選ぶときにはとても重要なポイントです!
ぜひ応募前にしっかり確認して、安心できる取引先を選ぶようにしてくださいね。
同じような翻訳求人情報サイトであるアメリアの求人については、下の記事で詳しく解説しています。
翻訳者ディレクトリと比較するときにとても参考になるので、ぜひ読んでみてくださいね!
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